歴史を生かし未来
を創る持続価値

Deportare Club 代表
竹下雄真

株式会社アトム
代表取締役社長

青井 茂

デポルターレクラブには、トップアスリート、経営者、文化人、芸能人など幅広い業界の一流の方が多く通っていただいています。そうした一流の会員様がトップランナーとして走り続けるためには、ライフスタイルや日常の習慣にその理由が隠されています。そこで、デポルターレクラブでは、代表・竹下雄真と会員様との対談企画をスタート。日ごろ実践している健康法やウェルネスに対する考え方、そして、忙しい日々の中、どのようにスケジュールを管理しているかを聞き、一流の会員様が一流である所以に迫ります。連載第6回目は、株式会社アトム代表取締役の青井茂さんをゲストにお招きしました。

竹下 青井さんとはもう10年以上のお付き合いですが、最近はどんなことに取り組まれていますか?

青井 基本的に不動産や投資の事業を手がけています。ここ数年は祖父の出身地・富山でも活動を始め、「地方覚醒」をテーマに、地元の人が誇りを持てる街づくりに挑んでいます。富山を皮切りに、人口30万人ほどの中小都市で、大手が手をつけにくい地域に投資し、ホテルやレストランなどを展開。地域の魅力を引き出す事業を進めています。

竹下 ここ赤坂でのプロジェクトについて教えてください。

青井 70〜80年前に建てられた料亭の跡地を再生しています。赤坂は高層ビルが建てられるエリアですが、私たちは建て替えではなく、歴史や文化を尊重しながら新しい価値を生み出すことを重視しています。現在はピザ屋、バー、宿泊施設を組み合わせた複合施設として運営中です。今あるものを次世代につなぐ「実験の場」として位置づけています。

竹下 スクラップ&ビルドではなく、再生の視点が独創的ですね。

青井 ありがとうございます。私は3代目として祖父や父の事業を受け継ぎ、「創業者の思いを次世代に繋ぐこと」を使命としています。人口減少が進む日本で重要なのは、持続可能な価値を残すこと。そのために限られた空間と時間の中で創造力を発揮し、唯一無二の表現を追求しています。

竹下 確かに、高層ビルばかりでは街が無機質になります。古い建物に新しい価値を加える姿勢が素晴らしいです。

青井 高層ビルも必要ですが、私見として、近年の開発は一辺倒で面白みに欠けます。だからこそ、変化球のような個性的な空間をつくりたい。最近は大手デベロッパーも、文化や健康といった情緒的価値の重要性に気づき始めています。機能・合理性だけでは生き残れないと感じているのでしょう。

竹下 食や宿泊施設の組み合わせは、どのような発想から生まれたのですか?

青井 不動産は数字で判断されがちですが、損益分岐点を計算するだけならAIでもできます。人間が関わる意味は“情緒的価値”を生み出すこと。例えばヨーロッパでは、200〜300年の歴史を持つ建物が制約の中で文化を育んでいます。私たちも限られた空間で、体験や文化を提供したい。今、ピザ屋のお客様の6〜7割は海外の方で、特に感度の高い人たちに評価されていると感じています。

竹下 おっしゃったように、ヨーロッパでは建物を簡単に壊すことができませんよね。

青井 弊社は今、“Imagine, 100 years”というスローガンを掲げているのですが、100年単位で物事を考えよう、という意味を込めています。人生100年時代といわれますが、建物の歴史で見ると100年なんて普通のスパンですよね。ナポレオンの時代や平安京の頃から残る建築に思いを馳せると、その壮大さやロマンを感じます。不動産業というのは、単に土地や建物を売買する仕事ではなく、そうした時間を預かる仕事だと思っています。だからこそ、「壊して建て替えればいい」という発想では続かない。長い目で価値を見つめることが大事だと思うんです。

本来、日本は千年単位の歴史を持つ国です。もっと誇りを持っていい。鎌倉や京都などは古いものと共存する文化を大切にすべきで、経済のドライブが強すぎて失われつつある部分を、少しでも取り戻すことが重要だと思います。小さなことでも、建物や場を通して「哲学」を伝えたい。万人受けしなくても、共感してくれる人に届けばいいと思っています。

竹下 扱う分野も広がっていますが、人とのつながりやパートナーの選び方は?

青井 基本は“ご縁”ですね。最後は目利きかもしれませんが、人とのつながりがすべてです。たとえば、オーストラリア人のルーク・サバスというピザ職人とは、会ったこともないのに一緒にピザ店を始めました(笑)。共通の知人が「絶対面白い人がいる」と紹介してくれて。彼は発酵文化や日本のお茶に興味があって、ピザづくりの哲学にも惹かれました。会わずに会社を立ち上げ、ビザまで発給して始めたんです。結果として、人のつながりが一番の財産だと改めて感じました。

竹下 信頼のネットワークが広がっていますね。

青井 そんな大げさなものじゃないですが(笑)。ベネッセの福武總一郎さんが「経済は文化のしもべである」とおっしゃっていて、まさにその通りだと思います。特に不動産は、それ単体では何も生まれない。そこに関わる人や文化があって初めて輝く。ルークのピザがあることで、この古い建物も息を吹き返したんです。経済は文化に支えられる——それを体感しています。

竹下 上階のホテルはどんなコンセプトですか?

青井 建築家の永山祐子さんにお願いしました。TOKYO TORCHや大阪万博のパビリオンなども手がけている方です。建築の世界はまだ男社会が根強い。娘を持つ父親として、女性が活躍できる場をつくりたいと思いました。永山さんの生き方や思想、哲学は次の世代に残すべきだと感じ、お願いしました。古民家再生を通じて、女性の感性が生きる場所をつくれたと思います。

竹下 永山さんの建築に泊まれるのは貴重ですね。どんなふうに関わられたんですか?

青井 基本的にすべてお任せです。私は「監督が試合中に口を出すチームは強くない」と思っていて、現場の自主性を大事にしています。シェフでも建築家でも、プロフェッショナルの力を信じて任せる。それがいいものを生むと思っています。

竹下 現在、どのくらいの事業を手がけているんですか?

青井 10社以上経営に携わっていますが、経営者は“仕掛け人”に近いかもしれません。責任は取りますが、基本は現場に任せます。権限を与えなければ人は育たない。ピザ屋も、ピザの原価やトマトの仕入れ価格にまで口を出し始めたら終わりです(笑)。数字は追っていますが、そればかりをやると本質を見失う。だから今は、信頼できる人に任せて、私は次の10年に向けて環境づくりに専念しています。

竹下 「あと10年がハイライト」とおっしゃっていました。体力やメンタルの維持はどうされていますか?

青井 まず、月に4回、デポルターレクラブというジムに通うことが一番の基盤になっています。以前は筋肉を大きくしたいなど、どちらかというとかっこよく見られたいという気持ちがありました。しかし今は「長く健康に生きられる体づくり」が優先です。強度の高い運動は一時的には効果がありますが、体にかかる負荷が大きく、疲労も蓄積されます。マラソンやトライアスロンに挑戦したこともありますが、体力がそがれ、持続可能な方法ではないと感じました。40代後半を迎え、運動や生活のスタイルが変わってきたと実感しています。

竹下 一緒に大阪マラソンに出たのを思い出します(笑)。

青井 懐かしいですね(笑)。今はむしろ、日常的な運動が中心です。例えば、一日に1万歩歩く、ゆっくり自転車で3時間回る、といった持続可能な運動です。以前のように大会で結果を出すための強度の高い運動は避け、体を壊さず楽しみながら続けられる運動を重視しています。運動方法は変わりましたが、目的は明確。“健康で長く活動できる体を維持すること”です。

Shigeru Aoi’s
Basic Time Schedule (Week Days)

竹下 確かに、青井さんは海外に行っても帰国後はトレーニングを欠かさず、ルーティン化されているので、非常に良いコンディションを保っています。年齢に応じたベストなコンディションを維持することは大切ですよね。特に「歩く」ことはとても大事です。

青井 歩くことは人間の原始的な行為で、誰でもできて費用もかからない。さらに、歩くことで新しい発見や出会いがあります。私は知らない道を通ることが好きで、仕事の一環としても楽しんでいます。例えば、普段通らない小道などを探索することで、街の新しい魅力に気づくことができます。

竹下 有酸素運動としても効果的ですし、太陽の光を浴びることによるセロトニン生成や、夜の睡眠の質向上にもつながります。筋トレなどの無酸素運動と組み合わせれば、非常に効率的な健康法です。

青井 また、食事面でも変化があります。以前はタンパク質を積極的に摂取する「足し算の栄養学」が中心でしたが、今は適度に食事を抜くことで体調を整える「引き算の栄養学」の感覚を取り入れています。例えば昼食を抜いたり、朝食を調整することでバイタルが回復する感覚があります。

それから、雄真さんのアドバイスで体重×1.5〜2グラムのタンパク質摂取を意識するようになりました。豆腐や納豆、プロテインドリンクなどを計算しながら摂取しています。炭水化物しか取れないからやめようとか、おにぎりはシャケにしようとか、考えて食べるってすごく大切だなと思っています。

竹下 タンパク質の量を目安に食事を選ぶことで、過食を避けつつ必要な栄養を確保できています。また、食事は何よりも「楽しむ」ことも大事だと思っていて、人の手が入った食事や思いのこもった料理を摂ることで、体だけでなく心も満たされます。

青井 食生活でいえば、私にはフィッシュオイルも重要です。海外出張で忘れた際に体調の違いを実感しました。日本人の体は魚をベースにしており、腸や吸収機能に合った栄養摂取が必要です。乳製品や動物性タンパク質の比率が高いヨーロッパでは、体調に差を感じることがあります。サプリメントを活用することで、食事だけでは補えない栄養を確保でき、体調維持に役立っています。

竹下 フィッシュオイルは炎症を抑える効果があるので健康維持に重要です。今の話を聞くと、「あと10年」どころかまだまだ走り続けられそうですね。

青井 体は元気ですが、頭がついていけるかどうか(笑)。でも、終わりを決めることも大事だと思っています。社長が長く居座ると危機感が薄れ、惰性になりがちです。だから私は“11年後に何をするか”をすでに決めています。常に次の挑戦を考えているからこそ、残りの10年を全力で走りきれると思います。

竹下 出会ってからの10年以上より短い期間ですね。

青井 そうですね。だからこそ、これからの10年をさらに濃くしていきたいと思います。

青井茂(あおい・しげる)

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。デロイト・トーマツ・コンサルティングにて特殊法人の民営化プロジェクトなどを担当。その後、産業再生機構にて企業の再生案件に従事。2019年に株式会社アトム代表取締役社長に就任。同年、「地方覚醒」をビジョンに掲げたまちづくり会社、富山県・株式会社TOYAMATO、長崎県・株式会社IKASAGANを立ち上げ、地方都市の活性化に尽力。2014年に元厚生労働省の官舎をリノベーションした「コートヤードHIROO」をオープンした他、宿泊施設やレストラン「Sabasu」などを手がけるなど、次の時代に向けた不動産価値向上を模索しながら世界を回り続けている。



『MU HEN KO』

東京・赤坂にあるMU HEN KO Tokyoは、全5室限定の静かな構成のもと、建築・ホスピタリティ・デザインの調和を通じて、「いま、この瞬間」に深く身を置く感覚を生み出すことを目的とした宿泊施設です。

建築家 永山祐子氏が手がけた空間は、光の形や素材の感触まで意図をもって設計され、北欧の洗練されたシンプルさと日本の自然な温もりが静かに交わります。建物の下階にはピザレストラン Sabasu があり、石窯で焼かれた熱々のピザを、滞在の延長として味わうことができます。



『Sabasu』

ピザレストラン Sabasuは、天然酵母(サワードウ)を使った生地のピザとナチュラルワインが楽しめるお店です。自家発酵生地の香ばしい食感と、クラシックからオリジナルまで多彩なメニューが人気で、カジュアルながら気の利いた一皿を求める地元客や観光客に支持されています。

詳細はこちらをご覧ください。
MU HEN KO:https://www.muhenko.jp/
sabasu:https://www.instagram.com/sabasu_akasaka/