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「コーヒーが筋トレのパフォーマンスをアップする」。

いま、トレーニング業界では、そんな説が注目を集めています。

デポルターレはコーヒーの新たな可能性を探るべく、「まいど屋アフロ珈琲」にオリジナルブレンドのコーヒー豆を依頼。同店の焙煎職人である綾戸イサさんは、デポルターレの代表竹下雄真と10年来の付き合いです。

嗅覚を失う難病を患いながら、焙煎職人として活躍するイサさんが、「デポルターレ」というオリジナルブレンドに込めた思いとは?

デポルターレ執行役員/CMO長谷川英男が、同店の焙煎職人、綾戸イサさんにお話をうかがいました。

ある日、嗅覚がなくなった
そして、コーヒー焙煎士をめざした

長谷川 ▶︎ イサくんが竹下と出会ったのはいつごろ?

イサ ▶︎ 中学校1年生のときだったかな。母(ジャズシンガー綾戸智恵さん)がトレーニングを始めて、その時のトレーナーが竹下さんでした。

長谷川 ▶︎ イサくんは都内の中学校を出てイギリスの高校に進学。そのあとは自動車整備士の専門学校に進んだんだよね。

イサ ▶︎ 車が好きで、整備士になりたかったんです。でも、二級自動車整備士資格をとったあと、病気になっちゃって。好酸球性副鼻腔炎といって、においを感じなくなる病気だったんですが、相当重症でした。 鼻がきかないとガス漏れに気づかなかったりして、命に関わるじゃないですか。だから、整備士をあきらめるしかありませんでした。

長谷川 ▶︎ それはいつ頃? 病気の原因はなんだったの?

イサ ▶︎ 24歳のとき。原因は不明でした。好酸球性副鼻腔炎は難病指定されていて、完治も困難。西洋医学だけじゃなくて、鍼などの東洋医学や、ちょっと怪しげな治療法も試してみたけれどやっぱり治すことはできませんでした。

長谷川 ▶︎ それでも、コーヒーの焙煎士を目指したのは、なぜ?

イサ ▶︎ 母に相談して、嗅覚が使えなくてもできる仕事を一生懸命探したんです。そうしたら、「コーヒー焙煎の仕事なら、鼻が使えなくてもできる」と教えてくれた人がいて。早速、知人に紹介してもらって、宮越屋珈琲で焙煎の修行をはじめました。

長谷川 ▶︎ においがわからなくても、コーヒーの仕事はできるんだね。

イサ ▶︎ 19世紀、アフリカの奴隷がコーヒーのプランテーションで労働させられていた時には、「奴隷たちがコーヒーのにおいに惑わされないように」と、彼らの鼻を焼いていたという説もあるんです。それなら嗅覚がなくても、焙煎の仕事ができるかもしれないと思って、はじめました。

長谷川 ▶︎ 今の症状は? 今もまったくにおいがわからないの?

イサ ▶︎ 今はだいぶ症状も和らいでいますが、まだ、においには鈍感ですね。でも、嗅覚がなくなった代わり、以前に比べて味覚が発達した感じがするんです。 鼻が使えなくなったとき、味覚が全部変わったんですよ。これまでおいしいと思っていた魚が生臭く感じられ、ご飯も食べられなくなりました。肉を食べると、「これはメスの肉だ」と直感的にひらめいたり………。バランスに気を使いました。

長谷川 ▶︎ 確かに、トレーニング前にコーヒーを飲んだクライアントからも、「飲みやすい」っていう声が多いよ。あと、「飲むと、戦闘態勢に入る」という人も多くて、“トレーニング前に、1杯のコーヒー"が習慣化している人も少しずつ多くなってきた。本来なら、トレーニングの効率をあげるには、コーヒー3〜4杯分のカフェインを摂取しなければいけないんだけど、それでもイサくんのコーヒーは、確実に大きな刺激になっているみたいだね。

イサ ▶︎ カフェインの効能もあるんだろうけれど、コーヒーの香りというプラシーボ効果もあるかもしれませんね。人間の五感のうち、メンタルと深くリンクしているのは味覚なんです。たとえば、友だちと出かけるファストフードはおいしいけれど、ひとりではそれほどおいしく感じられないみたいに。 僕が「デポルターレ」というオリジナルブレンドを考える時にイメージしたのは、それを飲めば「日常」と「トレーニング」のチャンネルが切り替わるみたいな、特徴的な味わい。飲んだ人に、「ここで、このコーヒーを飲むと、スイッチが入るんだよね」って言ってほしかった。

長谷川 ▶︎ コーヒーというとなんとなく、ビジネスマンが朝食の時に新聞を読みながら飲んで、会社に出かけるっていうイメージが刷り込まれているじゃない? でも実は、トレーニングとも深く関わりがあって、運動前にコーヒーを飲むとパフォーマンスが上がることが、科学的にも証明されている。僕たちも、そんな新しいコーヒーの可能性に賭けてみようって思ったんだよね。

イサ ▶︎ 僕もこの店をはじめるとき、ステレオタイプのコーヒーのイメージを壊したいという思いがあったんです。僕はいま、「マイルド」と「カントリーブレンド」という2種類のブレンドを、豆の状態で売っています。少しでも、風味が良い状態で届けたくて。 自宅で豆を挽く作業はもしかしたらハードルが高いかもしれないし、日頃、豆を挽かない人にとっては、豆を挽く作業はちょっと気取ったイメージがあるかもしれない。でも、もっと気楽な感じで自由に豆を挽いていいし、それでも十分楽しくて、おいしい。そんなふうにコーヒーのイメージをいい意味で壊したいと思ったんです。

長谷川 ▶︎ ステレオタイプのイメージを壊して、日々変化を生み出していく。そして、たとえ自分の望まない変化が起きたとしても、それをニヤニヤ楽しんでいく。「ニヤニヤしながら」っていうのがイサくんにとってのキーワードなんだろうね。ニヤニヤするほど表情が緩んでいたら、自然と気持ちも明るくなるだろうし、周りの人たちも楽しくなる。そして、そんな気持ちで焙煎するコーヒーだからこそ、飲む人の気持ちを明るくして、ポジティブな気持ちにしてくれるのかもしれないよね。

あるものを失って、あるものを手に入れる
人生は、その繰り返しでできている

長谷川 ▶︎ すごいね。鼻が使えなくなった分、味覚が鋭敏になったんだね。それは、コーヒーを焙煎する時にも役立っているんじゃない?

イサ ▶︎ そうですね。今は、コーヒーの焙煎具合を、においで嗅ぎ分けるのではなくて、空気の味で確かめています。なんとなくわかるんですよ、空気の味が。急に煙が甘く感じられたら、「ああ、そろそろだな」って気づきます。あとは、釜をまわしているときの、豆のザラザラいう音とか、豆がはぜるときのバチバチいう音とか、音も頼りにしています。

長谷川 ▶︎ 嗅覚が使えない分、身体の能力をフルに発揮して豆を焙煎しているんだろうね。あと、お母さんのジャズを小さいときから聞いているのも、役立っているのかもしれないよね。バチバチいうときの、独特のリズムとか。

イサ ▶︎ そうかもしれないですね。焙煎の仕事をはじめてからよく考えるんですが、僕が人生においてこれまで経験してきたことが、いま、全部役立っていると思うんですよ。 たとえば、焙煎機のエンジンは車のエンジンと共通している部分が多いから、ちょっと機械の調子がおかしくなったら、自分で直すことができることとか。嗅覚はなくなったけれど、その代わり、味覚がびっくりするほど鋭くなったし、確かに病気は不幸な出来事だったかもしれないけれど、その経験が役立つこともたくさんあるんですよね。

長谷川 ▶︎ その話は、デポルターレのミッション「存在するなら進化しろ」と共通する部分があるね。変化そのものを楽しむ姿勢はとても大切だよね。

イサ ▶︎ こういう話をすると、ものすごくポジティブな人間に思われがちなんだけど、僕はもともと石橋を叩いて叩いて、それでも渡るのをやめてしまうタイプ。でも母は真逆で、石橋がなくても空を飛んで渡っちゃうタイプ(笑)
だけどそんな母が、僕が病気になった時はものすごく落ちこんで、いろいろな人に相談してくれたんです。母の姿を見ていたから、僕はポジティブになれたのかもしれない。
ネガティブをとことんまで突き詰めたら、もう、やることがなくなっちゃうんですよね。ネガティブのメーターが思いっきり振り切れた感じ。結局、この環境を楽しむしかなかったんです。だから、せっかくなら病気でさえも、ニヤニヤしながら頑張ろうと思って。

長谷川 ▶︎ ニヤニヤしながら頑張る……(笑)なんとなくわかる感じがするね。
デポルターレは今、オリジナルのプロテインを開発しているんだけど、ラベルにプリントした三角マークは5度だけ、上を向いているんだよね。そこには、全力で急激な進化を目指すのではなく、ちょっとずつ進化していこうという意味が込められている。なんでも完璧に隙なく頑張るよりも、遊び心を持って、ちょっとずつ進化していく方が楽しいじゃない? それはもしかしたら、イサくんの「ニヤニヤしながら頑張る」のと似ているのかもね。

イサ ▶︎ そうかもしれないです。生きている以上、落ち込んでいても仕方がないことだってある。
僕の焙煎の方法も、もしかしたら宮越さんが僕でもできるように、アレンジして教えてくれたのかもしれないし、ほかのお弟子さんからみたら、邪道なやり方かもしれない。でも、それでも全然構わない。そもそもみんな、違うんだしね。

長谷川 ▶︎ 自己流にカスタマイズすること、そして、変化を楽しむことは大事だよね。「アフロコーヒー」というネーミングもおもしろい。

イサ ▶︎ 今は髪の毛を切ってしまったけれど、少し前までアフロヘアだったので、完全に見た目からとりました(笑)
だけど実は「アフロ」って髪型を意味するだけじゃなくて、人種的な意味合いもあるんですよ。僕の父はアフリカ系アメリカ人で、子どもの頃は外見でいじめにあうこともあった。だから屋号には、そういうことにも負けないっていう意味もこめています。

「トレーニング×コーヒー」という挑戦で
ステレオタイプのイメージを壊したい

長谷川 ▶︎ いま、デポルターレのジムラウンジでは、イサくんにお願いしているデポルターレオリジナルの豆を使って、フリーコーヒーを用意しているんだけど、その豆は、どんなことに気をつけて、完成させたの?
 完成まで試行錯誤した?

イサ ▶︎ トレーニング前に飲むと聞いたので、まずは、飲みやすいものを意識しました。でも、カフェインがトレーニングにいい影響を与えるため、カフェイン量はしっかり残さないといけない。

普通、深焼きにすると酸味が消えて飲みやすくなるけれど、カフェイン量も減ってしまうんですよ。だから、飲みやすさとカフェイン量のバランスに気を使いました。
長谷川 確かに、トレーニング前にコーヒーを飲んだクライアントからも、「飲みやすい」っていう声が多いよ。あと、「飲むと、戦闘態勢に入る」という人も多くて、“トレーニング前に、1杯のコーヒー"が習慣化している人も少しずつ多くなってきた。本来なら、トレーニングの効率をあげるには、コーヒー3〜4杯分のカフェインを摂取しなければいけないんだけど、それでもイサくんのコーヒーは、確実に大きな刺激になっているみたいだね。

イサ ▶︎ カフェインの効能もあるんだろうけれど、コーヒーの香りというプラシーボ効果もあるかもしれませんね。人間の五感のうち、メンタルと深くリンクしているのは味覚なんです。たとえば、友だちと出かけるファストフードはおいしいけれど、ひとりではそれほどおいしく感じられないみたいに。
僕が「デポルターレ」というオリジナルブレンドを考える時にイメージしたのは、それを飲めば「日常」と「トレーニング」のチャンネルが切り替わるみたいな、特徴的な味わい。飲んだ人に、「ここで、このコーヒーを飲むと、スイッチが入るんだよね」って言ってほしかった。

長谷川 ▶︎ コーヒーというとなんとなく、ビジネスマンが朝食の時に新聞を読みながら飲んで、会社に出かけるっていうイメージが刷り込まれているじゃない? でも実は、トレーニングとも深く関わりがあって、運動前にコーヒーを飲むとパフォーマンスが上がることが、科学的にも証明されている。僕たちも、そんな新しいコーヒーの可能性に賭けてみようって思ったんだよね。

イサ ▶︎ 僕もこの店をはじめるとき、ステレオタイプのコーヒーのイメージを壊したいという思いがあったんです。僕はいま、「マイルド」と「カントリーブレンド」という2種類のブレンドを、豆の状態で売っています。少しでも、風味が良い状態で届けたくて。
自宅で豆を挽く作業はもしかしたらハードルが高いかもしれないし、日頃、豆を挽かない人にとっては、豆を挽く作業はちょっと気取ったイメージがあるかもしれない。でも、もっと気楽な感じで自由に豆を挽いていいし、それでも十分楽しくて、おいしい。そんなふうにコーヒーのイメージをいい意味で壊したいと思ったんです。

長谷川 ▶︎ ステレオタイプのイメージを壊して、日々変化を生み出していく。そして、たとえ自分の望まない変化が起きたとしても、それをニヤニヤ楽しんでいく。「ニヤニヤしながら」っていうのがイサくんにとってのキーワードなんだろうね。ニヤニヤするほど表情が緩んでいたら、自然と気持ちも明るくなるだろうし、周りの人たちも楽しくなる。そして、そんな気持ちで焙煎するコーヒーだからこそ、飲む人の気持ちを明るくして、ポジティブな気持ちにしてくれるのかもしれないよね。

綾戸イサ

綾戸イサIssa Ayado

平成2年生まれ。ニューヨーク出生日本育ち。2014年に難病「好酸球性副鼻腔炎」を発症し嗅覚および味覚障害に。
それまで目指していた自動車整備士を断念し、病気治療中紹介されたコーヒー焙煎師の道に転向する。
北海道に本拠を置く宮越屋珈琲に師事を受け、まいど屋アフロ珈琲を始める。